近年、物流・運送業界は、働き方改革や少子高齢化に伴う労働力不足といった大きな課題に直面しています。こうした課題を解決する技術として、AMRが注目されています。AMRとは、自律走行搬送ロボットのことで物流現場を改善する物流ソリューションとして注目されています。
特に2024年問題に代表されるように、業界全体が変革を求められており、多くの企業に早急な解決策の導入が求められているなか、AMRの柔軟性と自律性は、これまでの搬送作業を大きく変える可能性を秘めています。
本記事では、AMRの基本的な仕組みやメリット、導入時の注意点を解説し、現場での活用方法についてご紹介します。AMRの導入をご検討中の企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
AMR(自律搬送型ロボット)とは
AMR(自律搬送型ロボット)とは、主に工場や倉庫、オフィスなどにおいて物品や搬送などの業務を行うことのできる産業ロボットです。AMRとは、Autonomous Mobile Robotの略で、物流業界・運送業界で注目を集めています。
ここではそんなAMRの特徴、注目されている背景、よく混同されやすい「AGV」との違いについて解説します。
AMRの機能・特徴
AMRとは、さまざまな機能と特徴を持つロボットです。
AMRの最大の特徴は、自律走行機能です。内蔵されたセンサーやカメラを使って周囲の環境を把握し、誘導体やガイドに依存することなく移動することができます。そのため、AMRは走行中に障害物を検知すると、自動で停止または回避を行います。ただし、すべてのAMRが必ずしも障害物を迂回するわけではなく、機種によっては検知時に停止対応のみとなる場合もあります。
近年では多種多様な機能をもつAMRが登場しています。例えば、物品の持ち上げ機能を備えている機種や、複数台の台車を牽引する機能を有するものも存在します。こうした機能を活かして形状や重さの異なる荷物にも柔軟に対応することができる上、人力では運ぶことのできないような重量物を運搬・配送することも可能です。さらに、他のロボットや管理システムと情報をやり取りし、作業を効率よく分担することもできます。
また、AMRはガイドを必要としないため様々な環境に適応しやすいとされています。ただし、狭所や半屋外、環境変化の激しい現場では運用が難しい場合もありますが、運用条件に応じたモデル選定により、幅広い現場での活用が可能です。
このように、AMRは安全性、効率性、柔軟性に優れ、幅広い現場で活躍することのできる能力を備えた物流ロボットです。
AMRが注目されている背景
AMRが注目される背景には物流業界が直面している課題が大きく影響しています。特に物流業界の「2024年問題」と呼ばれる、働き方改革関連法の施行が大きく影響していると言えるでしょう。新たな法律により、トラック運転手をはじめとする物流従事者の労働時間が制限され、人手不足がより深刻な状況に陥ると危惧されており業界全体の喫緊の課題として認識されています。
また、こうした状況に追い討ちをかけるように近年拡大したEC市場の影響により、物流量は増加の一途を辿っています。こうした「人手不足」や「急激な需要の高まり」といった課題を解決する糸口として、積極的な効率化と自動化による省人化システムの構築が注目されています。
特に、AMRは比較的、導入の障壁が少なく、安全かつ効率的に物品搬送や仕分け業務を行うことのできる点から多くの運送・物流事業者を中心に関心を集めています。
AMRの種類
AMRは機能や用途に応じて様々な種類や分類分けが存在します。
物流業界・運送業界では主に、「台車型」と「パレット型」の2種類に大別できます。
台車型 | パレッド型 | |
---|---|---|
特徴 | 平らな積載面を持ち、荷物や棚を直接運搬 | フォークリフトが行うパレットの運搬を代替可能 |
活用シーン | 物品のピッキングや出荷作業、部品供給 | 重量物や大型荷物の運搬、長距離・高頻度の搬送 |
メリット | 導入コストが少ない傾向にある、人との協働作業が容易 | 安定した搬送が可能、物流現場の効率化に寄与 |
台車型のAMRとは、平らな積載面を持ち、荷物や棚を直接搬送することを想定したロボットです。従来の取手のついた台車の形状であるため、人と共同で作業を行う場合に導入コストが少ない点が特徴。台車型は物品のピッキングや出荷作業、部品の供給などに適しています。
パレット型のAMRとは、フォークリフトによって行っていたようなパレットの搬送を代替することのできるAMRです。このタイプはパレットに積載されている重量物や大型の荷物を安定して運搬できることが特徴で、物流現場での効率化に寄与します。特に「長い距離」や「高い頻度」において利用を想定される場合に、省人化を飛躍的に前進させることができるという点が特徴です。
AMRとAGVの違い
AMRと混同されやすい用語に「AGV」があげられます。
AMR | AGV | |
---|---|---|
自律走行能力 | あらかじめ設定されたルートで走行する | 状況に応じ自律的に経路を変更できる柔軟性がある |
走行方式 | 磁気テープやガイドラインを基にルートを設定 | 機械学習を利用し、障害物を回避しながら柔軟に走 |
活用に適した現場 | ルーチン作業が中心 | 人との協働によって省人化を目標としている |
AGV(Automated Guided Vehicle)とは、無人搬送車と呼ばれる産業ロボットで、AMRとAGVどちらも物流や製造現場において活躍しています。しかし、AMRとAGVには「物理的なガイドの有無」という点で大きな違いが存在します。
AMRはデジタルなマップデータをもとに、センサーから得られた周囲の状況に応じて自律的に走行することができるタイプもあります。一方で、AGVは予め決められたルートのみを走行することが一般的です。
主に、磁気テープやガイドラインを用いてルートを設定するため、同じ環境やルーチン作業の求められる現場では有用でしょう。しかし、障害物を回避する能力を有していないため、臨機応変な対応を行うことはできません。このような点から、AMRはAGVと異なり人と共生して効率化を行う、「省人化のサポート役」としての役割に最適です。
AMRとAGV(無人搬送車)の違いについてさらに詳しく知りたい方は、AMRとAGVの違いは?価格コストや導入メリットを徹底比較をご覧ください。
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AMRが自律走行する仕組み
AMRは高度なカメラやセンサー、そしてそれらから得られた情報を高度に処理する技術によって自律的な作業を実現しています。
ここでは、そんなAMRが自律走行する仕組みについて詳しく解説します。導入を検討している方や実際の導入時の障壁、安全性などについて気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
カメラやセンサーを利用して地図作成
AMRは周囲の環境を認識し、適切に移動をすることが可能です。このような動作を可能にしているのはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術です。SLAMにはいくつかの種類が存在し、レーザーを利用することで距離を測定する方法やカメラ画像認識によって周囲のデータを取得し、地図の作成を行っています。
このようにして作成された地図を用いて、現在地点と目的地を最適に結ぶルートを策定し、無駄を減らした効率的な移動を実現しています。また、地図を作成する場合はリアルタイムに更新することが可能なタイプもあり、人間による更新作業を行わずとも自律して作業を行うことができます。
障害物回避システム
センサーで検知した障害物や人を即座に判断し、停止、または経路の変更を行うことができます。また、比較的小型の機種も多いため、小回りを活かして人間や従来の大型な機械では通ることのできないようなスペースでも作業ができるように活用することができます。
中には、機械学習を活用することで、過去のデータを基に特定の環境や障害物のパターンを学び、より効率的な回避行動を取ることができる機種も存在します。こうした機種では、「人が多く通るエリアでは、事前に別ルートを選択する」といった事前の予測的な動作も可能であり、元の経路へ迅速に復帰できるため、作業効率を下げることなく作業を続行することができます。
このような動的な環境への適応力がAMRの安全性と信頼性を高め、企業の現場での活用を後押ししています。
自律的なタスク管理
一部のAMRには、複数の搬送タスクを自律的に管理し、効率的に作業を分担できる機能が搭載されています。こうした機種では、上位の管理システムやAIを活用して現場の状況を把握し、タスクの優先順位やロボットの割り当てを最適化することが可能です。
また、モデルによっては機械学習を取り入れることで、過去の運搬履歴や現場の傾向を学習し、より効率的なルートやスケジュールの策定に貢献する場合もあります。ただし、こうした高度な機能は一部のハイエンド機種に限られることが多く、導入時には実運用環境との適合性を見極めることが重要です。
このような技術の進化は、将来的な物流現場の自動化・効率化を後押しする要素として注目されています。
AMRを導入するメリット
ここでは、AMRを導入するメリットや活用方法について解説します。
作業効率の向上による稼働率の増加
AMRとは、物流現場や製造現場において作業効率を大幅に向上させる産業ロボットです。特に、24時間の稼働が可能という点が大きな利点です。
従来の人力作業やフォークリフトによる搬送では、休憩や時間的な制約によって稼働率に限界がありました。一方で、AMRは昼夜問わず作業を継続することが可能なため、作業の中断によるタイムロスを減少し現場全体の作業効率向上に大きく寄与します。
また、AIを活用した最適化アルゴリズムにより、搬送タスクの優先順位を効率的に割り振り、複数のロボットが協調して作業を進めることができます。これにより、荷物のピッキングや運搬にかかる時間が短縮され、生産性が飛躍的に向上します。
さらに、経路の最適化によって移動距離を削減するため、無駄な時間や動きを排除し、現場全体の稼働率を最大化することが可能になります。
省人化への寄与
AMRは省人化を実現するための有効な手段として、多くの業界で注目されています。
物流や製造現場では、物品の搬送や仕分け作業などの単純作業が多く発生します。これらをAMRが担うことで、従来人手が必要だった業務を大幅に削減することができます。
また、AMRは特定の作業に特化させることも可能です。そのため、AMRは比較的単純なルーチン作業を担当し、人はより正確性や専門性の求められる作業へ集中して配置するといった人材の有効活用も可能になります。
特に労働力不足が深刻化している現代において、物流現場や工場の省人化は企業の競争力向上や持続可能な運営に直結する重要な要素です。AMRは労働時間や環境に依存せず稼働するため、現場の生産性向上と人件費削減に大きく貢献します。
作業者のヒューマンエラーや事故の防止
AMRはセンサーやAIを駆使して正確に動作するため、作業者によるヒューマンエラーや事故のリスクを大幅に低減できます。
従来、人手で行われていた物品の運搬作業では、集中力の低下や不注意によるミス、さらに重機を使った作業では接触事故をはじめとするリスクが常に存在していました。しかし、AMRはロボットであるため疲労や体調に左右されない安定した作業が可能であり、ミスを防ぎつつ継続的な業務が可能です。
省エネや電気代節約
AMRは24時間稼働可能な特性を持つため、ピークオフやピークカットを活用し、エネルギー消費を最適化することができます。
例えば、作業が昼間の繁忙時間帯に集中する現場では、電力需要が短時間で集中的に高まり、結果としてエネルギーの無駄やコスト増加が発生してしまうこともあるのではないでしょうか。
AMRの24時間稼働可能というメリットを活かして、夜間や電力需要の低い時間帯に稼働させることで、電気代のコスト低減や電力需要に対する負担軽減にも寄与します。特に、大規模な工場や倉庫では、使用するエネルギー量が膨大なため、わずかな効率化でも大きなコスト削減と環境負荷の軽減を実現できるようになります。
こうした取り組みは、電気代などの運用コストの削減だけでなく、電力供給の安定化にも寄与するものであり、企業利益と社会的価値を同時に生み出すCSV経営としての側面ももちます。
AMRを導入する際の注意点
AMRは効率化や、省人化、安全性の向上といった様々な利点を有しています。しかし、導入の際にはいくつか気をつけなければならない点も存在します。
そこで、ここではAMR導入する際の注意点について解説します。導入を検討している場合は事前に注意点を把握しておくようにしましょう。
現場環境への適合性
導入を検討する際、現場の環境がAMRの使用に適しているかどうかを事前に確認することが重要です。AMRはセンサーやカメラを用いて周囲を認識し、自律的に動作しますが、狭い通路や段差、傾斜、滑りやすい床などはその動作を妨げる可能性があります。
また、倉庫や工場のレイアウトが頻繁に変更される場合、AMRが備えるマッピング機能や柔軟性が十分に対応できるかを確認する必要があります。さらに、日照や照明の具合によってもカメラを使用するAMRの動作が影響を受ける場合があるため、光の条件にも注意が必要です。
現場の特性に応じて適切なAMRを選び、場合によっては床面の改修やレイアウトの固定化などの準備が求められます。現場環境を詳細に分析し、必要な調整を行うことで、AMRの性能を最大限に発揮させることが可能です。
初期費用とROI(投資対効果)
AMRを導入する際には、初期費用の妥当性と期待される投資対効果(ROI)を慎重に検討する必要があります。AMR本体の価格に加え、設置や設定にかかる費用、現場環境の整備費用が発生する場合もあり、総コストを把握することが重要です。
一方で、AMRは作業効率の向上や省人化、安全性向上による間接的なコスト削減効果も見込まれます。これらの利点が初期投資を上回るかどうか、導入後のシミュレーションや試験運用を通じて具体的な数値で確認することが必要です。
さらに、運用規模に応じた適切なAMRを選ぶことで、過剰投資や不足投資を防ぐことができます。企業の財務状況や現場のニーズに合った導入計画を立てることが、AMRの効果を最大限に引き出すポイントです。
セキュリティ対策
近年、企業に対する不正アクセスなどのサイバー攻撃によって、業務の停止や機密情報の流出といった深刻な被害が相次いでいます。これらは情報漏洩による顧客や取引先からの信頼の低下、業務システムのクラッキングによる多額のコストを引き起こす可能性があります。
そのため、IT統制の一環として、会社の管理するシステムに接続する全てのデバイスのセキュリティ状況について説明を求められるケースが増えています。特に、投資家や取引先などのステークホルダーからセキュリティ対策の状況について尋ねられた際に、明確な回答を行うことのできる状態にしておくことが重要です。
しかし、AMRは専門性の高い機器であることから、導入企業の管理を行っている担当者様やセキュリティ担当者様であってもセキュリティ対策や、アクセスの仕組みを網羅的に把握することが困難な場合もあるかもしれません。
そのため、セキュリティ対策において万全な体制を備えていることはもちろん、明確な説明やサポートを受けられるようなAMRの製品を選ぶことが重要です。
サポートメンテナンス体制
AMRを長期的に活用するには、安定したサポートとメンテナンス体制が不可欠です。稼働中のAMRにトラブルが発生した際、迅速に対応できるサポート窓口があるかを確認しておく必要があります。
また、定期的なメンテナンスやソフトウェアのアップデートは、AMRの性能を維持するだけでなく、故障や作業効率低下を未然に防ぐためにも重要です。
導入前には、メーカーや提供会社がどの程度のサポート体制を備えているか、交換部品の供給状況やトラブル時の対応スピードなどを確認しましょう。さらに、メンテナンス契約がある場合は、その内容を詳細に把握することも大切です。適切なサポートとメンテナンスを受けることで、AMRを効率的かつ安全に運用することが可能になります。
まとめ:扱いやすい搬送ロボットをお探しなら「CarriRo®」シリーズがおすすめ!
AMRをはじめとする搬送ロボットとは、物流や製造現場の効率化、省人化、安全性向上に寄与する有力なソリューションですが、その導入には現場環境や運用目的に応じた慎重な検討が必要です。特に、搬送作業をどの程度自動化するか、作業効率向上とコスト削減をどう両立させるかなど、選択肢や検討事項は多岐にわたります。
容易な導入プロセスと多機能な搬送ロボットをお探しの方には「CarriRo®」シリーズがおすすめです。
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