自社の物流環境をより良くするために、AMR(自律走行搬送ロボット)やAGV(無人搬送車)の導入を検討している会社様もいるでしょう。しかし、AMRとAGVの違いが分からず、どちらを選べば良いか悩んでいる方も多いはず。
そこで本記事では、AMRとAGVの選択に迷っている方に向けて、両者の特徴やコストの違い、メリット・デメリットを徹底比較します。具体的な活用シーンに応じた選択方法についても解説します。 この記事を読めば、自社のニーズに最適な搬送システムを選べるようになり、業務効率化の第一歩を踏み出せるでしょう。
AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の違いを比較
AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の違いを定義・技術的特徴・コストで比較していきます。
AMRとAGVの定義の違い
AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、「自律走行搬送ロボット」と呼ばれ、自律的に移動してタスクを遂行する能力を持ちます。周囲の環境を認識しながら誘導体に依存せずに動作できる点が特徴です。ただし、AMRにはさまざまな種類があり、その機能や用途は設計によって大きく異なります。例えば、シンプルに固定ルートを走行するAMRもあれば、柔軟にルートを選択するタイプも存在します。
これに対し、AGV(Automatic Guided Vehicle)とは、「無人搬送車」として、あらかじめ設定されたルートを正確に走行するよう設計されています。AGVは磁気テープやランドマークなどの誘導体を用いてルートを決定します。これにより、決められたルートを正確に搬送するのが得意で、大量生産ラインや固定ルートの搬送作業に適しています。
AMRとAGVの技術的特徴の違い
AMRとAGVは、物流ロボットとして技術的に異なる特性を持っています。主な違いは「走行方法」と「障害物への対応能力」です。
走行方法 | 障害物へ対応能力 | |
AMR | 誘導体やガイドラインの設置が不要です。固定ルートを自律的に走行するタイプや、周囲の環境を認識し、自律的にルートを選択して移動するタイプがあります。 | センサーで障害物を検知し、停止・回避を自律的に実行。固定ルートでも安全性を確保できる設計が可能です。 |
AGV | 磁気テープや高周波信号線などの誘導体を使用して走行するため、決められたルートを安定的に走行することが強みです。 | ルート上に障害物があると停止します。 |
なお、ミラボット社が開発する「CarriRo®」のように、従来のAGVの安定性を持ちながら、AMRに近い柔軟性と拡張性を兼ね備えた次世代型搬送ロボットもあります。ランドマークを貼るだけで簡単に導入でき、タブレットでルート変更が可能なため、固定ルート運用にも対応しつつ、環境変化にも柔軟に適応しています。
AMRとAGVの価格・コスト面の違い
AMRとAGVを選ぶ際は、初期コストと運用コストを考慮することが重要です。
AMR | AGV | |
初期投資コスト | 高め:一般的にはセンサーやソフトウェアが必要なため | 低め:誘導体を使用するシンプルな構造のため |
運用コスト | 低め:レイアウト変更などに柔軟に対応可能なため | 高め:誘導体の定期メンテナンスやルート変更時にコストがかかるため |
効果を発揮する環境 | 柔軟なルート設定が必要な環境から、固定ルート運用に特化した現場まで対応可能。 | 決められたルートでの繰り返し作業が多い現場で効果を発揮する |
AMRは高度なセンサーやソフトウェアを搭載しており、初期投資コストがAGVより高めです。しかし、誘導体の設置や保守が不要で、レイアウト変更にも柔軟に対応できるため、運用コストを抑えることが可能です。一方、AGVは誘導体を使用するシンプルな構造で、導入しやすいものの、誘導体の設置や定期的なメンテナンス、レイアウト変更時の再設置が必要となり、運用コストが高くなる場合があります。
ミラボット社の製品は、AGVの安価な初期導入コストを維持しながら、AMRに近い柔軟性を兼ね備えています。具体的には、床面に誘導線を埋め込む必要がなく、ランドマーク(シール)を貼るだけで簡単に導入できるため、初期投資を抑えつつ導入のハードルは低めです。また、タブレット操作によるルート変更が可能で、レイアウト変更や運用の柔軟性が求められる環境でもコストパフォーマンスを発揮します。
AMRとAGVのメリット・デメリットの違い
AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)は、製造業や物流業界で活躍する自動搬送ロボットです。それぞれの特性を理解することで、現場に最適な選択が可能になります。
AMRのメリット・デメリット
はじめにAMRのメリットを解説します。主なメリットは以下の通りです。
- 柔軟な運用が可能になる:AMRはSLAM技術を採用しており、周囲の状況をリアルタイムで把握して最適なルートを自動で選択します。頻繁にレイアウト変更が発生する現場にも柔軟に適応できます。
- ルート設定不要:磁気テープや誘導体の設置が不要なため、初期導入にかかる手間を削減できます。
- 人との協働が可能:作業エリアを人と共有することが可能で、協働搬送を実現します。作業者の移動負担を減らすことができます。
続いて、AMRのデメリットを解説します。気をつけるべきことは以下の3点です。
- 導入コストが高い:高度な技術を搭載しているため、初期費用が高くなります。加えて、ソフトウェアの更新やメンテナンスなどのランニングコストもかかります。
- 搬送速度のばらつき:障害物回避を優先するため、一定の速度で走行し続けることが難しい場合があります。
- 初期設定が複雑:SLAM技術を活用するため、導入時にはマップ作成やデータ設定に時間と労力を要します。
AGVのメリット・デメリット
続いてAGVについて見ていきます。まずは、AGVのメリットをまとめます。
- 高い搬送精度と安定性:AGVは磁気テープや誘導体に沿って走行するため、決められたルートからのズレがほとんどありません。精度が求められる作業に向いています。
- ヒューマンエラー防止:決められたルートでの作業を繰り返し行うため、人手によるミスを回避できます。品質の安定に貢献します。
- 工場・倉庫での省人化促進:単調な作業を効率的に行えるため、人手不足の解消や作業者の負担軽減に役立ちます。
注意すべきAGVのデメリットは以下の通りです。
- 柔軟性が低い:レイアウト変更が頻繁にある現場には不向きです。変更時には再設定が必要となり、手間がかかります。
- 障害物に対処できない:障害物があると停止してしまうため、通路の整備が欠かせません。
- メンテナンスの必要性:磁気テープや誘導体は消耗するため、定期的な交換や点検が必要です。
以上のAMRとAGVそれぞれのメリット・デメリットを比較し、自社の運用方針にあったシステムを導入しましょう。
AMRとAGVのどちらを導入するべきか?
AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)は、搬送作業の自動化を担う主要な選択肢です。それぞれの特性を理解し、運用環境やニーズに合わせて適切な機器を選ぶことが重要となります。そこで以下では、AMRとAGVの特徴や適した導入ケースについて詳しく解説します。
AMR(自律走行搬送ロボット)がおすすめな方
AMR(自律走行搬送ロボット)がおすすめな代表的な現場を3つまとめます。
- 現場のレイアウト変更や工程変更が頻繁にある現場
- 人とロボットが共存して作業する現場
- 長期間運用することを考えている現場
まずAMRがおすすめなのは、現場のレイアウト変更や工程変更が頻繁にある現場です。AMRはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を活用しており、周囲の環境を認識しながら最適なルートを自律的に探索できるためです。レイアウトや工程が頻繁に変更される生産現場でも、追加のガイドやティーチングが不要です。
また、AMRは障害物や人を検知し、自動で回避する機能を備えています。そのため、人とロボットが共存する作業空間でも安全に運用できます。作業員が多く動き回る倉庫や工場では、AMRを導入することで効率的かつ安全な搬送が可能です。
AMRは機械学習を通じて最適な走行ルートを分析・改善できます。その結果、運用を続けるほど効率が向上します。またAGVと比べてメンテナンスコストも低いため、長期間運用することで、費用対効果も改善されていきます。
AGV(無人搬送車)がおすすめな方
一方で、AGV(無人搬送車)がおすすめな現場を3つご紹介します。
- 決められたルートを繰り返し搬送する現場
- レイアウト変更が少なく、安定した環境で運用する場合
- 初期導入コストを抑えたい場合
AGVは磁気テープやランドマークを基に、あらかじめ設定されたルートを正確に走行します。そのため、ルートが固定された搬送作業において、非常に高い効率を発揮します。たとえば、パレットや部品を特定の生産ラインに供給する作業には、AGVが適しています。
AGVはルートの変更に手間がかかるという特徴があるため、環境が固定されている場合は導入が適しています。飲食店やホテルのバックヤード、物流倉庫の特定区間など、一定のルートで安定した運用が求められる現場に最適です。
また、AGVは一般的にAMRよりも初期導入コストが低めです。特に、シンプルな搬送作業を想定している場合には、費用対効果のメリットを受けることができます。
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AMRやAGVを導入する際の注意点
AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)を導入する際には以下の注意点に気をつけましょう。
- 導入目的やコスト対効果を明確にする
- 運用環境を整備する必要がある
- 安全性とメンテナンス体制を確保する必要がある
それぞれ解説していきます。
導入目的やコスト対効果を明確にする
AMRやAGVを導入する際は、まず導入目的を明確にすることが重要です。自動搬送ロボットは、物流倉庫業務の自動化や人手不足解消に役立ちますが、現場の特性により最適な選択肢は異なります。たとえば、レイアウト変更が頻繁な現場では柔軟に動けるAMRが適しています。一方で、決まったルートを繰り返し使用する現場ではAGVが効率的で、コスト削減にもつながります。
コスト対効果の検討も欠かせません。AMRは初期投資がAGVより高額になるケースが一般的ですが、ROI(投資回収期間)を算出し、長期的なメリットを比較する必要があります。さらに、運用中の消耗品やメンテナンス費用についても考慮し、導入による具体的な効果を見積もることが重要です。
運用環境を整備する必要がある
AMRやAGVの性能を最大限に引き出すためには、運用環境の整備が求められます。特に床面の状態が重要です。凹凸があったり滑りやすかったりする場合は整備を行い、ロボットがスムーズに動作できるようにしましょう。AMRは障害物回避機能を持っていますが、AGVは固定された誘導体に依存するため、通路の障害物を排除することが不可欠です。
また、倉庫管理システム(WMS)や製造実行システム(MES)との連携を行うことで、運用の効率がさらに向上します。AMRの場合、安定したインターネット通信環境が運用の鍵を握ります。
安全性とメンテナンス体制を確保する必要がある
自動搬送ロボットの導入では、安全性を確保することが最優先事項です。AMRやAGVがISOなどの安全基準を満たしているか確認し、緊急停止装置が設置されていることを確認してください。加えて、作業員への教育も重要です。特にAMRは作業者と同じ空間で稼働する場面が多いため、協働作業時の安全性を十分に理解してもらう必要があります。
導入後のメンテナンス体制も整備しましょう。定期点検を実施し、故障時には迅速に対応できるサポート体制を構築することで、ダウンタイムを最小限に抑えられます。
まとめ
本記事では、AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の違いを比較し、AMRとAGVのどちらを導入するべきかを解説しました。それぞれの特徴を理解することで、自社の現場に適した搬送システム選びの悩みを解決することができます。
AMRとAGVとはどんな特徴があるのか、それぞれの違いを押さえ、最適な選択をしましょう。本記事の内容を参考にすることで、搬送業務の効率化や安全性向上を実現し、作業現場の生産性を大幅に高めることができるでしょう。