物流業界では人手不足、業務効率化の必要性、さらには燃料費高騰など、現場で直面する課題が年々増えています。しかし、これらの課題に対して本当に必要な解決策がわからない、またはどこから手をつけるべきかわからない、と悩んでいる方も多いかと思います。

 

そこで本記事では、物流業界の現状から重要な課題を洗い出しながら、具体的にどのような取り組みをしていけばいいのかを解説していきます。本記事を読むことで、物流業界が直面する問題点とその改善策を理解し、今後の対応に役立てることができるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

 

物流業界の現状【統計データ】

はじめに物流業界の現状について把握していきましょう。実際の統計データをもとに、物流業界の現状を紐解いていきます。

 

国内物流市場の規模推移

令和3年度時点で、日本の物流市場規模は安定した成長を続け、約29兆円に達しています。背景には、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化があります。特に新型コロナウイルス感染拡大以降、在宅需要が増えたことで市場はさらに拡大しました。

 

国土交通省のデータによると、2023年には運賃や燃料費の上昇という課題があるものの、市場全体は引き続き成長を続けています。このような背景から、物流業界では効率的な運営が求められる時代となっています。

 

経由価格(全国)の推移(令和4年8月24日時点)

 

参考:経済産業省「物流を取り巻く現状と取組状況について」2024年6月

 

EC市場の拡大による物流需要の変化

EC市場の急速な成長が物流業界に大きな影響を与えています。2021年には物販系EC市場規模が13.2兆円に達し、それに伴い宅配便の取扱個数も増加。また、翌日配送や当日配送など迅速なサービスへの期待が高まり、再配達率の増加が物流業界の課題となっています。

 

2024年10月の国土交通省調査では、宅配便の再配達率は約10.2%を記録。2023年10月の約11.1%から改善していますが、依然として再配達率は改善の余地があります。さらなる改善のためには、効率的な配送体制の整備が求められます。

 

参考:国土交通省「報道発表資料:令和6年10月の宅配便の再配達率は約10.2%」2024年12月6日

 

物流業界が抱える10の課題

 

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以下では、物流業界が抱える課題を10つ一覧でご紹介します。物流業界や運送業の課題は10つ以上ありますが、特に重要だと考えられる課題に厳選しました。

 

  1. 人手不足の深刻化
  2. 人材育成・技能継承の課題
  3. 輸送コストの高騰
  4. 配送の小口化と多頻度化
  5. 再配達の増加
  6. 配送ルートの非効率化
  7. 積載効率の低下
  8. 環境問題への対応
  9. サプライチェーンの複雑化
  10. デジタル化(DX化)の進展とその影響

 

①:人手不足の深刻化

物流業界と運送業の最も深刻な課題は「人手不足」です。特にトラックドライバーが不足しており、少子高齢化や長時間労働、低賃金がその原因となっています。2027年にはトラックドライバーが24万人不足するとされています。現在、45歳以上のドライバーが60%を超え、若年層の参入が少ないことが課題を一層深刻化させています。

 

一部では「自動運転技術が人手不足を解消する」という意見もありますが、実用化には時間がかかります。短期的な解決には、労働環境の改善と若手人材の育成が不可欠です。物流業界が持続的に発展するためには、働きやすい環境を整備し、若年層を積極的に採用することが求められます。

 

②:人材育成・技能継承の課題

物流業界や運送業では、ベテラン従業員から若手への技能継承も物流問題の一つです。少子高齢化によりベテランの引退が進む中、次世代を担う人材育成が追いついていない現状があります。

 

例えば、中小物流企業では研修プログラムを導入する余裕がなく、新人ドライバーが即戦力として現場に出るケースが多いです。AIやロボットで技能継承を補える可能性もありますが、現場対応力や判断力は人間の経験に依存します。

 

そのため、物流業界全体で人材育成を体系化し、技能継承を支える仕組み作りを進めることが重要です。

 

③:輸送コストの高騰

燃料費や人件費の上昇により、輸送コストが急増している点も物流課題の一つです。石油価格の変動や労働力不足による人件費高騰が主な要因と考えられます。

 

特に中小企業では利益率が低下し、経営難に直面するケースが増えています。「価格転嫁で解決できる」という意見もありますが、競争が激化しているため簡単ではありません。

 

標準的な運賃制度の活用が進んでいない点も課題です。燃料効率の改善や共同配送の推進など、具体的なコスト削減策を講じることが必要です。

 

④:配送の小口化と多頻度化

物流業界の課題は、EC市場の拡大により、小口配送や多頻度配送が増加していることです。消費者ニーズの多様化で、当日配送や翌日配送のようなサービスが一般化し、効率的な配送網の構築が求められています。

 

例えば、大手ECサイトでは1回の注文に対して複数回の配送が行われることもあります。物流網の効率化と消費者行動の見直しを並行して進めることが重要です。

 

⑤:再配達の増加

再配達による非効率性が物流業界の大きな課題となっています。国土交通省のデータでは、2024年時点で再配達率が約10.2%に達しており、非効率な運行がCO2排出量の増加にもつながっています。

 

また、不在時の再配達依頼が多く、ドライバーの労働負担やコスト増加を招いています。宅配ボックスや置き配サービスなども発達しておりますが、さらなる啓蒙活動を進めるとともに、時間指定受取サービスの活用を促進する必要があるでしょう。

 

⑥:配送ルートの非効率化

物流業界の課題で注目されているのが、配送ルートの非効率化です。配送先の増加や交通状況を考慮したリアルタイム最適化技術が導入されていないことが原因と考えられます。

 

従来型のルート設計では、渋滞など予測困難な事態に対応しきれません。AI技術を活用しつつ、中小企業でも導入可能な支援策を講じることが求められます。

 

⑦:積載効率の低下

物流業界では積載効率の低下も課題となっています。トラックの積載率は年々減少しており、小口配送の増加や多頻度配送への需要が主な要因です。

 

特に、ECサイトの普及により、短い納期での配送ニーズが高まり、積載量を十分に確保できないまま配送するケースが増えています。

 

解決策として、AIによる配送計画の最適化や企業間での共同配送、貨物のシェアリングサービスの活用などが進められています。

 

⑧:環境問題への対応

物流業界ではCO2排出量の削減が重要課題となっています。運輸部門は日本のCO2排出量の約2割を占め、その過半数がトラック輸送によるものです。政府は2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しており、物流業界でも対策が急務となっています。

 

EVトラックや水素燃料トラックの導入が進められていますが、物流施設での充電設備などのインフラ整備や高額な車両価格が課題です。当面は、エコドライブの実践や効率的な配送ルートの設定など、実行可能な取り組みを着実に進めることが重要です。

 

参考:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」2024年4月26日更新

 

⑨:サプライチェーンの複雑化

グローバル化により、企業の調達・販売網は世界規模で拡大し、物流管理はより複雑になっています。この変化により、供給の安定性が低下し、管理コストも増加しています。

 

2020年の新型コロナウイルス感染症の流行では、各国の輸出入規制や港湾の混雑により、物流の遅延やコスト上昇が発生しました。また、特定地域への依存度が高いサプライチェーンのリスクも明らかになっています。

 

⑩:デジタル化(DX化)の進展とその影響

物流業界のデジタル化(DX化)は徐々に進み始めていますが、依然として紙の書類や手作業による管理が残っています。特に中小企業では、システム導入のコストが負担となり、デジタル化が遅れています。

 

この遅れは在庫管理や配送計画の非効率化を招き、コスト増加につながっています。また、システム間でデータを共有できない「サイロ化」も課題です。

 

解決策として、クラウド型の物流管理システムの導入が進められています。これにより、リアルタイムの在庫管理やAIによる需要予測が可能になります。

 

物流業界における行政の取組

 

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物流業界が直面する課題を解決するために、国土交通省をはじめとする行政はさまざまな取り組みを進めています。ここでは、その中でも特に注目すべき取り組みを詳しく紹介します。

 

働き方改革関連法への対応

物流業界では「2024年問題」が大きな課題となっています。この背景から、トラックドライバーの労働環境改善が急務とされています。2024年4月には改善基準告示の改正が施行され、以下の制限がされるようになりました。

 

  • ドライバーの1日あたりの拘束時間:原則13時間以内
  • ドライバーの年間拘束時間:原則3,300時間以内

 

これは長時間労働を是正し、働きやすい環境を整えることを目的としています。

 

この規制によって労働負担が軽減される一方、ドライバーの収入減少や運送能力の低下といった新たな課題も生じています。こうした問題に対処するため、行政は荷主に対しても荷待ち時間の削減や納品スケジュールの見直しを求めています。これにより、物流全体の効率化が進むことが期待されています。

 

物流効率化法の改正

物流業界の課題解決を目的として、物流総合効率化法が改正されました。この法律では以下の取り組み内容を推奨することで、積載効率の向上や燃料費削減が図られています。

 

  • 輸送網の集約
  • モーダルシフト(鉄道や船舶への輸送手段切り替え)
  • 複数企業が共同で配送する仕組み

 

特にEC市場の拡大によって小口配送が増加している現状では、共同配送の拡大が非常に有効です。このような施策は、輸送効率を高めるだけでなく、環境負荷の軽減にもつながります。

 

補助金・支援制度の整備

物流業界が抱える課題を解決するには、新しい技術や設備への投資が欠かせません。しかし、中小企業にとっては初期投資が大きな負担となる場合があります。そのため、行政は補助金や支援制度を整備し、企業の取り組みを後押ししています。

 

例えば、デジタルタコグラフや動態管理システムなど、デジタル技術の導入に対する助成金が提供されています。これにより、中小企業でも物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための基盤が整いつつあります。また、老朽化した道路や橋梁といった物流インフラの整備にも予算が充てられており、持続可能な物流網の構築が進められています。

 

物流業界の課題に対する解決策

 

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では、物流業界の課題に対して、どのような解決策を講じていけばよいのでしょうか。本記事では、代表的な施策の3つについて解説していきます。

 

デジタル技術を活用して物流のDX化を促進する

物流業界では、アナログな業務プロセスが課題の一つとなっています。特に配車管理やトラックの動態把握、荷待ち時間の削減といった分野ではデジタル化が欠かせません。例えば、配車管理システムを導入することで、効率的な配送ルートの設計が可能になり、人的ミスの防止や時間短縮につながります。動態管理システムを利用すれば、トラックの位置情報をリアルタイムで把握できるため、予期せぬトラブルにも迅速に対応できます。

 

倉庫内作業においても、自動化技術が物流問題の解決策に役立ちます。AIを活用した在庫管理やAGV(自動搬送ロボット)の導入により、人手不足や作業効率の問題を解消できます。

 

様々な物流ソリューションを導入する

物流業界の課題には、多様な物流ソリューションの導入が有効です。例えば、以下のような事例が挙げられます。

 

  • 再配達問題を解消→置き配や宅配ボックスの導入
  • トラックの積載効率を向上→共同配送の採用
  • CO2排出量削減とコスト効率向上→モーダルシフト

 

これらの物流ソリューションを適切に導入することで、物流業界の課題を効果的に解消できます。

 

協業・共同化の仕組みを整える

物流業界全体で協業や共同化を進めることも重要な解決策です。国土交通省が推奨する「輸配送の共同化」では、多くの荷主や物流事業者が連携し、輸送効率を最大限に引き上げます。この取り組みにより、人手不足や燃料費高騰といった複数の課題を一度に解決できます。

 

また、物流業界内でデータ共有基盤を構築し、荷主と物流事業者が協力することで運送契約や運賃設定の適正化が進みます。このような取り組みは、多重下請け構造の是正やドライバー不足への対策にもつながります。さらに、行政と民間企業が連携して「ホワイト物流推進運動」を強化することで、働きやすい環境作りも実現します。

 

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物流業界の将来性や今後の見通し

 

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物流業界は、多くの課題を抱えつつも、今後も成長が期待される分野です。効率化や新技術の導入により、さらに進化を遂げる可能性があります。

 

そんな物流業界では、近年のEC市場の拡大や消費者の多様なニーズに対応するため、迅速かつ柔軟な配送体制が求められています。これらを解決するためには、新しい技術や仕組みを取り入れることが必要です。特に、自動化やデジタル化の進展が物流業界の課題解決に大きく寄与すると考えられています。

 

例えば、倉庫作業におけるロボットの導入やAIによる需要予測は、作業効率を大幅に向上させています。また、環境問題への取り組みとして、電気自動車や再生可能エネルギーを活用した配送システムの導入も進んでいます。これらの技術革新により、物流業界の課題が解決され、持続可能な社会の実現にも寄与しています。

 

物流業界は課題を抱えながらも、その解決策として新技術の導入や効率化が進んでいます。これにより、さらなる成長が見込まれる分野です。業界の動向に注目しながら、自社の物流業務にも活かせる取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

本記事では、物流業界の現状や課題を紹介するとともいに、行政の取組や具体的なソリューションについて解説しました。この記事を読むことで、物流業界の現状や課題の本質を理解し、物流改善に向けた具体的な視点を得られたのではないでしょうか。

 

物流業界は現在、さまざまな課題に直面しています。特に人手不足や技能継承の問題、燃料費上昇による輸送コストの増加、EC市場拡大に伴う小口配送・再配達の増加など、課題は多岐にわたります。

 

弊社(ミラボット株式会社)は、物流業界が抱える課題に対応するためのソリューションを提供しています。特に、物流ロボ「CarriRo®(キャリロ)」シリーズは倉庫や工場内物流などの現場で省人化と作業の効率化を図ることで、人手不足などの課題を解決できます。

 

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